不動産投資を検討する際、家賃相場の水準や動向は欠かせないチェックポイントです。しかし、「全国平均」で語られる数字だけでは、地域ごとの細かな違いまでは見えてきません。
エリアごとの家賃相場とその推移を理解することは、不動産投資におけるリスク管理にも直結します。地域特性を丁寧に読み解き、将来を見据えた物件選びができるのが理想です。数字だけにとらわれず、その土地の暮らしやすさ、将来性にも目を向けることが、長期的な成功につながるかと思います。
本記事では、地域別に家賃相場の推移を概観しつつ、今後の見通しについてまとめてみました。
地域別の家賃水準はなぜ異なる?
家賃相場は、地域の特性によって大きく左右されます。たとえば東京都心部では、利便性やビジネス需要が高いため、ワンルームでも10万円以上する物件が珍しくありません。一方、地方都市では同じ広さの部屋が5万円前後で借りられることもあります。
この違いは、単に「都会だから高い」というだけではなく、人口の多さ、交通網の充実度、オフィスや商業施設の立地、大学や病院といった公共施設の存在など、複数の要素が家賃に影響しています。
首都圏の家賃相場の推移
東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県といった首都圏では、ここ数年、家賃水準が比較的堅調に推移しています。特に東京都心部(千代田区、中央区、港区など)は高水準を維持しており、賃貸需要も底堅い状況です。
ただし、コロナ禍によりリモートワークが広がった影響で、郊外エリアへの引っ越し需要が増え、一部のエリアでは都心より郊外の家賃が上昇する動きも見られました。今後も、テレワークの定着度合いやオフィス需要の回復状況に応じて、エリアごとの動きが細かく分かれていくと考えられます。
関西圏・中京圏の家賃動向
大阪市中心部(梅田・難波周辺)や名古屋市中心部でも、近年は再開発が進み、ファミリー向け・単身向けともに家賃水準が堅調に推移しています。ただし、東京ほど絶対的な価格差がないため、物件選びによって収益性に大きな差が出やすいのが特徴です。
特に大阪市では、インバウンド需要の回復や万博開催に向けた開発計画が進み、今後も一定の賃貸需要が見込まれています。一方、名古屋市ではトヨタ自動車をはじめとする製造業の景気動向が賃貸市場に影響を与える点に注意が必要です。
地方都市の家賃相場
地方都市では、都市圏からの移住促進策やテレワーク需要の影響で、特定エリア(例:福岡市、札幌市、仙台市など)の家賃相場が緩やかに上昇しています。特に福岡市は人口増加が続いており、賃貸市場も活況を呈しています。
ただし、地方全体で見れば、人口減少が続く地域も多く、空室率が高止まりしているエリアもあります。地方都市への投資を検討する際は、単なる家賃水準だけでなく、人口動態や雇用環境、都市計画などを総合的にチェックすることが重要です。
今後の見通しを予測するには
今後の家賃相場を予測する際には、以下のような視点が必要かと思います。
- 人口増加が見込まれるエリアかどうか
- 交通インフラの整備・拡充計画の有無
- 再開発や都市機能強化の動きがあるか
- 賃貸物件の新規供給量(建設ラッシュになっていないか)
首都圏や主要都市では、急激な家賃上昇は見込みにくいものの、インフレ圧力や建築コストの上昇を背景に、堅調な推移が続くと予想されます。地方都市についても、個別に有望なエリアを選べば、収益性の高い投資機会も期待できると思われます。
家賃相場を調べる方法と参考データ
家賃相場等を調べる方法として、不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME’Sなど)の掲載データや、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」、不動産会社の市場レポートなどがあります。
なお、ポータルサイトに掲載されている家賃は「募集家賃」であり、実際に契約される家賃(成約家賃)とは異なる場合があります。正確な家賃水準を知るには、成約ベースのデータもあわせて確認するとより実態に近い分析が可能になります。
※本記事は、2023年10月〜2024年3月の公的統計および主要不動産マーケットレポート(東京カンテイ、アットホーム住宅総研、LIFULL等)をもとにしています。最新の情報は以下のサイトよりご確認下さい。
公的機関の統計・レポート
1. 国土交通省「住宅市場動向調査」
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内容:住宅取得や賃貸に関する実態調査。
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最新報告書(令和5年度): PDF版
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e-Stat統計ページ: https://www.e-stat.go.jp/statistics/00600630
2. 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
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内容:取引価格、地価公示、周辺施設、防災情報などを地図上で閲覧可能。
3. 東京都「住宅市場動向報告書」
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内容:都内の住宅市場に関する統計データや分析。
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最新の報告書(令和5年度): PDF版
4. 不動産流通推進センター「不動産業統計集」
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内容:不動産業界全体の統計データを網羅。
民間の調査・レポート
5. 東京カンテイ「市況レポート」
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内容:マンション価格や賃料の動向を定期的に発信。
6. アットホーム「市場動向の調査データ」
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内容:全国の賃貸・売買市場の最新データを提供。
7. LIFULL HOME’S「不動産マーケットレポート」
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内容:エリア別の家賃水準、賃貸・売買の市場動向
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