不動産投資では、利回りという言葉がよく使われます。「利回りが高い物件がいい」と言われることもありますが、その数字の背景をしっかり理解できている方は意外と少ないかもしれません。この記事では、「不動産価格」と「家賃水準」からどのように利回りを読み取るのかを解説します。
利回りとは?基本の考え方をおさらい
利回りとは、簡単に言うと「投じたお金に対して、どれくらいのリターン(収益)があるか」を示す指標です。不動産では一般的に、1年間の家賃収入を物件価格で割って算出されます。
- 表面利回り(グロス利回り):年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
- 実質利回り(ネット利回り):諸経費(税金、管理費など)を引いた後の収入で計算
また、キャップレート(還元利回り)という言葉もよく登場しますが、これは不動産鑑定評価などで使われる、投資家の期待利回りを示すものです。実務では「表面利回り」を入り口として、「実質利回り」へと踏み込んで検討していくのが一般的です。
不動産価格と利回りの関係性
利回りの計算には、分母となる「物件価格」が大きく関係します。たとえば、同じ家賃10万円でも、物件価格が2,000万円であれば利回りは6%、3,000万円なら利回りは4%です。
一見すると価格の安い物件の方が利回りは高く見えますが、だからといって「お得」とは限りません。価格が安いということは、何らかの理由(築年数が古い、立地が弱い、空室リスクが高いなど)がある可能性もあります。逆に、都心のように地価が高い場所では利回りが低くなりやすいですが、その分、安定性や資産価値の高さが魅力になります。
家賃水準の調べ方と便利なサイト
利回りを読み解くには、そのエリアの家賃水準を正しく把握することが必要です。調べる際に役立つサイトには、以下のようなものがあります。
【募集家賃を調べるサイト】
- SUUMO(https://suumo.jp)
- HOME’S(https://www.homes.co.jp)
- CHINTAI(https://www.chintai.net)
【成約賃料・市場動向】
- アットホーム 市場動向(https://athome-inc.jp/news/data/market/)
- 東京カンテイ 市況レポート(https://www.kantei.ne.jp/report/)
【公的統計】
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ(https://www.land.mlit.go.jp)
※土地総合情報システムは2024年3月末で廃止され、2024年4月から不動産情報ライブラリでの掲載になりました。
なお、ポータルサイトで見られる家賃は「募集家賃」であり、実際に契約された家賃(成約家賃)とは少し異なる場合があります。正確な分析には、成約ベースのデータも確認するのがよいです。
サンプルで見る利回りの違い
- ケース①|都内の区分マンション(新築)
- 価格:4,800万円
- 家賃:15万円/月(年間180万円)
- 表面利回り:3.75%
- 実質利回り:2.81%(諸経費 約45万円)
- ケース②|地方都市の築20年アパート(1棟)
- 価格:3,000万円(4戸)
- 家賃:1戸5.5万円 × 4戸 = 22万円/月(年間264万円)
- 表面利回り:8.80%
- 実質利回り:6.60%(諸経費 約66万円)
- ケース③|郊外駅徒歩10分・築浅ファミリータイプ
- 価格:2,900万円
- 家賃:13万円/月(年間156万円)
- 表面利回り:5.38%
- 実質利回り:4.03%(諸経費 約39万円)
- ケース④|再開発エリアのオーナーチェンジ物件
- 価格:3,500万円
- 現在の家賃:11.5万円/月(年間138万円)
- 表面利回り:3.94%
- 実質利回り:2.96%(諸経費 約34.5万円)
- 再契約時の増額・将来の資産性に期待
利回りだけにとらわれない判断を
「利回りが高ければ良い物件」と単純に考えるのは危険です。表面利回りが高くても、空室が多かったり、設備の修繕が頻繁に必要だったりすると、実際の利益は大きく減ってしまいます。利回りはあくまでもスタート地点で、その背景や将来性まで含めて判断することが望ましいです。
不動産価格と家賃水準を丁寧に読み解くことで、利回りの“中身”が見えてきます。数字の表面だけでなく、「なぜこの価格で、この家賃なのか?」という視点を持つと、投資判断の質も高められると思います。