市況と家賃相場の関係 投資判断に活かすポイント

不動産投資を始める際に、「このエリアは家賃が高いから儲かりそう」といった印象で物件を選ぶ方も多いかもしれません。ですが、家賃相場の背景には、地価の動きや住宅・オフィス市場の変化など、さまざまな要因が関わっています。各要因を理解しておくことで、より納得感のある投資判断ができるようになります。

ここでは、「地価動向」「賃貸住宅市場」「分譲マンション市場」「賃貸オフィスビル市場」の4つの視点から、市況と家賃相場の関係を解説してみます。

地価動向と家賃の関係

地価(ちか)とは、その土地の価格を表すものです。土地の価格が上がるということは、そのエリアに人や企業の需要が集まってきている証拠でもあります。地価が上がれば、新しく建てられる建物の建築コストや土地取得費も上がるため、自然と新築物件の家賃も高く設定されやすくなります。

また、地価の上昇は周辺の既存物件にも影響を与え、エリア全体の家賃相場がじわじわと上がっていくこともあります。

反対に、地価が下がってもすぐに家賃が下がるわけではありませんが、長い目で見ると賃料の調整圧力がかかってくるケースもあるため、注意が必要です。

賃貸住宅市場の動向

賃貸住宅市場は、単身者の増加や共働き世帯、高齢化といった社会の動きによって大きく左右されます。たとえば大学の多い街では、春の新入生・新社会人の引っ越しシーズンにあわせて賃貸需要が一気に高まり、家賃も上昇する傾向があります。

また、空室(誰も住んでいない部屋)の割合が多い地域では、大家さん同士の競争が激しくなるため、家賃が下がったり、敷金礼金ゼロなどの条件を出して入居者を集めようとすることもあります。こうした需給バランスを読み取ることが、安定した収益を生むためには大切です。

分譲マンション市場との関係

分譲マンション(購入用マンション)の価格が高くなりすぎると、住宅を買いたくても買えない層が賃貸市場に流れやすくなります。結果として、賃貸の需要が増え、家賃が上がるというケースもあります。

また、購入後すぐに賃貸に出される「オーナーチェンジ物件」が市場に増えると、新しくて設備の整った物件が賃貸市場に供給され、周辺の古い物件の家賃設定にも影響を与えることがあります。こうした動きも含めて、分譲市場の動向は賃貸家賃と密接に関係しています。

賃貸オフィスビル市場の動き

少し異なる視点として、オフィスビルの賃料についても触れておきます。景気がよく企業の業績が伸びているときには、「もっと広くて立地の良いオフィスに移ろう」という動きが増えるため、賃料も上がっていきます。

一方で、不況などで企業のコスト削減が求められると、オフィスの解約や縮小が進み、空室率が増えて賃料も下がりやすくなります。オフィスの賃料と住居用の家賃は必ずしも連動するわけではありませんが、「その街の景気感」を測るひとつのヒントにはなります。

投資判断にどう活かせばよいか?

実際に不動産投資を検討する際には、目の前の物件情報だけでなく、「その地域の市況が今どうなっているか」「家賃相場は今後どう動きそうか」をあわせて考えることがとても大切です。

例えば、地価が上がり続けているエリアであれば将来の値上がりも期待できますが、家賃がすでに高止まりしている可能性もあります。逆に、地価が横ばいでも人口が流入していたり、再開発の計画があるような地域では、今後家賃が上昇する可能性があります。

こうした情報を知るには、不動産ポータルサイトのデータや自治体の統計資料、国土交通省の地価公示などの公的データを活用するといった方法があります。また、実際に現地を訪れて、生活インフラや街の雰囲気を自分の目で確認することも、数字では見えない大切な判断材料となります。

家賃相場は不動産投資の「収益の柱」となる要素です。市況との関係を理解することで、収益の安定性を見極め、より納得感のある投資判断ができるようになります。まずは「家賃がどのように決まるのか」「それに何が影響を与えているのか」を学んでいくのがよいかと思います。

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