X

不動産投資のリスクを測る尺度「標準偏差」

不動産投資を成功させるうえで大切なのは、収益が安定しているかどうかですが、表面利回りだけを見て判断するのではなく、収益の「ブレ」を把握することで、より正確にリスクを見極めることができます。そのために使われる指標のひとつが標準偏差(standard deviation)です。

標準偏差とは、「平均値からどれだけ数字がばらついているか」を表す統計的な指標です。例えば、家賃収入や投資リターンの実績を複数年分並べたとき、それらが平均値の周辺に収まっていれば標準偏差は小さくなります。逆に、大きく上下に振れるようであれば標準偏差は大きくなり、それだけ不確実性が高いと判断されます。

安定して稼ぐ物件とはどういうものか

たとえば、ある物件Aの過去5年間の年間利回りが次のような数値だったとします。

  • 1年目:5%
  • 2年目:6%
  • 3年目:5.5%
  • 4年目:6.2%
  • 5年目:5.3%

この場合、どの年も大きな差がなく、5〜6%の範囲で安定しています。標準偏差は小さくなり、リスクが比較的低いと判断できます。

一方、物件Bの利回りが以下のようだったとします。

  • 1年目:2%
  • 2年目:8%
  • 3年目:-1%
  • 4年目:10%
  • 5年目:3%

平均利回りはAと大きくは変わらないかもしれませんが、年ごとのばらつきが大きく、予測しにくい状況です。このような物件は標準偏差が大きくなり、リスクの高い投資先と見なされる可能性があります。

数字だけに頼らず、背景も読む

ただし、標準偏差はあくまでも「過去の実績」に基づいた指標です。将来も同じように推移するとは限りません。不動産は地域や建物の特性、入居者層、景気などの外的要因にも影響されるため、標準偏差だけでリスクを評価するのは不十分です。

また、不動産投資においては年次の収益データが少なかったり、適切な比較がしにくいケースもあります。標準偏差は、あくまで複数の物件を相対的に比較する補助的な指標として活用するものとなります。

リスクを「感覚」ではなく「数値」で捉える

標準偏差の良いところは、リスクを感覚ではなく数値として可視化できる点にあります。複数の物件を比較したり、投資ポートフォリオを考える際にも、単純な利回りの高さだけでなく「収益の安定性」にも目を向けられるようになります。

仮に利回りが高くても、それが一時的なものであったり、空室・家賃下落などによって不安定になりがちな場合、長期的な運用ではかえってリスクとなります。そうした判断をするためにも、標準偏差のようなリスク指標を活用していくことが有効です。

reona: