不動産投資の収益性を判断する際、「年間利回り」や「キャッシュフロー」といった基本指標のほかに重要なものとして、一定期間の投資収益性を判断する「NPV(正味現在価値)」と「IRR(内部収益率)」があります。
NPV(Net Present Value)とは何か
NPVは「正味現在価値」と訳され、投資によって得られる将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引き、初期投資額と比較することで、投資の“純利益”を金額で把握するための指標です。
計算式は以下のようになります:
NPV =(将来得られるキャッシュフローの現在価値)−(初期投資額)
仮にNPVがプラスであれば、「現在投資することで将来的に得られる収益のほうが上回る」、つまり投資する価値があると判断できます。逆にマイナスであれば、その投資は避けたほうがよいという判断材料になります。
NPVの計算には「割引率(ディスカウントレート)」の設定が必要です。これはリスクや資金調達コスト、インフレなどを考慮した利率のことで、NPVの大きさはこの割引率に大きく左右されます。
IRR(Internal Rate of Return)とは何か
一方、IRRは「内部収益率」と呼ばれ、NPVをゼロにする割引率=投資によって得られる年平均の利回りを意味します。言い換えると、「この投資をした場合、何%のリターンが得られるのか?」を表す指標です。
IRRの値が、期待する収益率や資金調達の金利を上回っていれば、その投資は合理的だと判断されます。たとえば、IRRが7%のプロジェクトに対して、資金調達金利が3%であれば、十分に利益が期待できるということになります。
IRRは複数の投資案件を比較するのにも有効で、単に利回りの高さを見るのではなく、将来のキャッシュフロー全体を利率として可視化できるのが特徴です。
NPVとIRRはどう使い分ける?
NPVは「どれだけの利益が得られるか」を金額ベースで示し、IRRは「利回りベースでどれだけ効率が良いか」を示します。どちらも将来の収益を考慮している点では同じですが、用途が少し異なります。
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NPVは“絶対的な収益額”を重視した投資判断に向いています。
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IRRは“効率”や“比較”に適した指標です。たとえば同じ予算で複数の投資案件がある場合、IRRが高い方を選ぶのが基本です。
ただし、IRRは複雑なキャッシュフロー構造の案件(例えば複数のマイナスが途中にある場合)では、計算上、複数の解が出ることがあるため注意が必要です。
利回りだけでは見えない「本当の収益性」を見るために
NPVとIRRは、表面的な利回りや年間キャッシュフローだけでは見えない投資の真の価値を測るうえで重要なツールです。不動産投資では初期費用、運用期間中の収益、そして最終的な売却価値まで含めて評価する必要があるため、これらの指標を取り入れることで、より精度の高い投資判断が可能になります。
初めは計算が難しく感じられるかもしれませんが、Excelや不動産投資シミュレーションツールでも簡単に算出できるようになっています。数字に基づいた投資判断の第一歩として、ぜひ活用してみてください。